SPIと適性検査ミキワメの違いを徹底比較

SPI3とミキワメは、どちらも採用選考で使われている適性検査です。導入しやすいWebテスト形式について、徹底比較します。

能力検査の内容の違い

SPI3 ミキワメ
科目内容 言語分野: 二語の関係、語句の意味、文の並び替え、長文読解
非言語分野: 座席配置等の推論問題、表を読む問題例が公式に掲載されている
言語理解、論理接続、文章構成力、図表処理、図表論理、数値論理、状況把握。各7項目の説明は公開資料では確認できない

学力テスト形式の能力検査の最大のポイントは、学術研究の進展により仕事の成果の予測力が引き下げられてきたことです。 かつて期待されていた使い方ができないことが分かっています。

近年の研究にもとづくと、総合得点で偏差値35または下位7%水準以下だけを弱いマイナス材料として残すという使い方が適切です。

これは直接不採用を決める点ではなく、かなり低い得点が出たときに、仕事で必要になる理解・処理能力に不足があることに着目する目安です。 たとえば、面接やワークサンプルなどでその仕事への適性をプラスに評価できる材料が確認できなければ、不通過とする判断は妥当です。

SPIもTG-WEBも、能力を数値として返すので、スコアに比例した評価として使いたくなります。 しかし、その数字の大小をそのまま仕事の能力差に置き換えられない、という点が研究成果です。

たとえば偏差値65の応募者を偏差値50の応募者より高く評価するといった、細かな順位づけには使えません。 また、応募者が多いから例年45で切っていた基準を今年は55で切る、といった足切りの調整としても機能しません。 これは、切り捨てた層に仕事で活躍しうる人材が普通に含まれうる、という意味です。

導入するなら、自社応募者の下位を分離できる水準かを確認する必要があります。

性格検査は独自指標で実体追跡困難

SPI3 ミキワメ(推定)
性格尺度 社会的内向性、内省性、身体活動性、持続性、慎重性、達成意欲、活動意欲、敏感性、自責性、気分性、独自性、自信性、高揚性、従順性、回避性、批判性、自己尊重性、懐疑思考性 無私性、楽観性、独立性、批判性、新奇性、やりきる力、積極性

性格については、ビッグファイブではないため仕事の成果予測に使える根拠はありません。 SPIは著名であるため、学者による過去の分析があります。その結果、ラベルの数ほど性格成分は観測できませんでした。そのため職務予測力も低いという指摘があります。

ミキワメにはたどれる研究はありません。「BIG FIVEなどのパーソナリティ理論との相関も確認できております」と説明しています 1。数値水準が欠けていることから、相関が低いと解釈するのが安全で、SPIと同様の独自指標と捉えられます。

ミキワメは独自性がとくに強い

ミキワメは、性格以外に17種類の尺度を分析しますが、後述のような個別の問題を抱えており、選考指標として根本的な疑問があります。

SPIは性格記述の難はあるものの、ジャングルのような構造上のねじれはありません。

メーカー分類 尺度 研究分類
コミュニケーション 傾聴傾向、主張傾向、関係維持傾向、問題解決志向、感情配慮志向 コンピテンシー
ストレスマネジメント 妥協力 コンピテンシー
ストレスマネジメント 客観視傾向、気分転換傾向、協力要請傾向、状況受容傾向、感情抑制傾向 コーピング
バイタリティ 社交欲求、競争心、向上心 仕事への動機づけ
バイタリティ 自己効力感 自己効力感
バイタリティ ポジティブシンキング 独自尺度(研究分類を追跡できず)
バイタリティ 重要な他者 独自尺度(研究分類を追跡できず)

一般研究を類推できる分野については、その研究を参考に割り引いた値が参考になります。

相対的に挙動を推定できるのは動機づけに近い社交欲求、競争心、向上心です。 仕事への動機づけ(モチベーション)から、その後の職務成果への関係を調べた近年のメタ分析では、仕事のパフォーマンスを統制したうえで β=.129 でした。2

いちおうは正の値ではありますが、平均的な関係としては小さい値です。 個人レベルでは、職務成果の分布が大きく重なり、意欲の高低と職務成果の順位に多数の逆転を含むと考えるべき水準であり、採否に用いると誤選択の危険があります。

一方、自己効力感・コーピング5種・コンピテンシー6種の計12の指標は、学術研究の前提から乖離しており、別物になっています。

自己効力感は、仕事の習熟に伴って上がるといった現在の認知を示す指標であり、自己効力感が未来の仕事を予測することを支持する研究は見つかりません。たとえば就職・転職でタスクが変われば自己効力感も下がる想定です。採用指標に使うべきものではありません。

コーピングは、心理テストでいくつかの型に分類して最適な対処を決められるようなものではありません。研究はもっと細かな状況の違いによってコーピングが複雑に変わることを記述しています。少数の固定的な傾向へデフォルメすると、研究の前提が失われ、もはやコーピングではない独自尺度になります。

その他のコンピテンシーについては、位置づけにずれがあります。導入企業の仕事を起点に設計せず一般化している乖離があり、その部分が構造的にネックです。

「ポジティブシンキング」と「重要な他者」は、職務研究で使われる標準概念への対応を確認できず、完全に独自尺度と見るべきです。

なぜこれを採用判断に使うのか、職務との関係を説明するのは難しいでしょう。重要な他者は本人を測る尺度ですらないため、公正さに欠ける懸念もあります。

合成によりさらにねじれる

ミキワメは、これらの尺度を距離やマッチを含む総合的な評価に合成します。

ここには、二重のねじれ構造があります。

  1. 既述のとおり、個々の尺度が指しているものが不透明
  2. 総合評価がどのような観点で合成されているのかがブラックボックス

現実問題として、充実感・安心感・やる気の「現在のメンタルヘルス」3項目は公式に「採用での選別には使わない方が安全」と説明しています3。 (それを言うなら、少なくとも動機づけの3項目も使わない方が安全です。)

利用企業が注意して無視しなければならない指標が表示されると同時に、総合指標に何が使われているのかが分からないのです。 少なくとも主要なスコア表示には、先ほどの現在のメンタルヘルスも含む27項目がすべて掲載されています3。

また、マッチについては、本来の適性検査の概念から外れています。

「S〜Eの14段階でマッチ度を総合評価」することを主要な特徴としています。その根拠は完全にブラックボックスながら、表示上は「全社ハイパフォーマーとのマッチ結果」となっており、人と人の相性を着眼点とするロジックであることが分かります4。

組織の従業員との尺度の近さを測るという方法は一見すると合理的です。 しかし選考をテーマとする学術研究で、相性マッチが仕事の活躍を予測するという支持は弱く、どちらかというと着眼点としては敬遠される方向です。ミキワメ独自の分析手法と言えます。

むしろ、たまたま今いる人の偏りを正当化すると、その仕事をできる母集団に対して機会が均等ではなくなり、差別を助長する方向に作用します。

そのため、公正な採用においてカルチャーフィットは、人の相性を注意深く除外してきています。これは、人権意識の異なる海外採用では特に問題となりえます。

SPI優位もベストと言い切れない

SPI3 ミキワメ
購入の選択肢 基礎能力検査+性格検査セット 能力検査+性格検査セット
料金 4,000円/名 500円/名+システム利用料 40,000円/月〜+初期費用
検査時間 性格+基礎能力で約65分 性格約10分。能力は公式内に20分/30分表記があり不一致
公式サイト 詳細 詳細

両者とも、かつて中心的に支持されていた学力テストに独自尺度の性格検査を追加したセット構成という点で類似しています。

ミキワメが性格外の心理尺度へと大きく拡張している(推定20/27項目)ことと、それらを混ぜ合わせたブラックボックスの総合評価を出力していることが最大の違いです。

結論として、ミキワメは非推奨です。これほど体系的に学術研究のフレームから外れている製品は珍しく、採用に用いるべきでない指標が混入しているなど、根本的な設計に混乱が見られます。

もしどうしても導入したいのであれば、公式の案内どおり信用できる指標を限定して、総合評価を含むそれ以外の指標は存在しないものとして利用することになるでしょうが、基本的な目的と反するように思えます。他の製品では見かけない注釈です。

一方、いまとなってはSPIも適性検査としてもっとも優れた製品とは言い切れません。 月10名程度以下では少なくともミキワメよりは割安ではありますが、それでもコストパフォーマンスは市場の中位程度です。

ビッグファイブの性格検査を中心に、候補製品の幅を広げて比較することを推奨します。学力テスト形式の能力検査は導入必須ではありません。

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