SPI3と不適性検査スカウターは、どちらも採用選考で使われている適性検査です。 どちらを選ぶべきかは導入環境によって変わり、また、かなりのケースでこの2つがベストと言えないことがあります。
導入しやすいWebテスト形式について、徹底比較します。
能力検査の内容の違い
| SPI3 | スカウター | |
|---|---|---|
| 科目内容 | 言語分野: 二語の関係、語句の意味、文の並び替え、長文読解。非言語分野: 座席配置等の推論問題、表を読む問題例が公式に掲載されている。 | 語句理解: 基礎的語句の理解 / 計算基礎: 基礎的な計算 / 統計: 基礎的な統計計算 / 図形認識: 簡単な構造の図形認識 / 法則理解: 単純な法則性・規則性の認識 / 文脈理解: 日常会話レベルの文脈理解 / 論理思考: 初歩的な命題判断・少ないステップの思考展開 |
学力テスト形式の能力検査の最大のポイントは、学術研究の進展により仕事の成果の予測力が引き下げられてきたことです。 かつて期待されていた使い方ができないことが分かっています。
近年の研究にもとづくと、総合得点で偏差値35以下だけを弱いマイナス材料として残すという使い方が適切です。
35は直接不採用を決める点ではなく、かなり低い得点が出たときに、仕事で必要になる理解・処理能力に不足があることに着目する目安です。 たとえば、面接やワークサンプルなどでその仕事への適性をプラスに評価できる材料が確認できなければ、不通過とする判断は妥当です。
SPI3もスカウターも、能力を数値として返すので、スコアに比例した評価として使いたくなります。 しかし、その数字の大小をそのまま仕事の能力差に置き換えられない、という点が研究成果です。
たとえば偏差値65の応募者を偏差値50の応募者より高く評価するといった、細かな順位づけには使えません。 また、応募者が多いから例年45で切っていた基準を今年は55で切る、といった足切りの調整としても機能しません。 これは、切り捨てた層に仕事で活躍しうる人材が普通に含まれうる、という意味です。
難易度の違いは選定を左右する
学力テスト形式の能力検査は、20世紀末には第一選択肢のような扱いでしたが、今となっては必ず実施するものではなくなりました。 使うのであれば、受検者の適切な割合が低いスコアをとるような難易度であることがもっとも重要になります。
スカウターの能力検査は、ほぼ小学生の学習要綱の範囲にある基礎学力を中心とした検査です。 応募者層が小学生レベルの出題の回答に不安がある状況なら、能力検査としての役割を期待できます。
一方、応募者のほとんどが小学生レベルの出題では容易に高得点を取ってしまう想定なら、ヒントとしての最低限の用途が失われます。
より難しい能力検査なら差を作れる可能性はあるため、その意味ではSPIの方が適しているとも言えます。 しかし、SPIはコストパフォーマンスの面で他のサービスに見劣りする面があるため、どうしても能力検査が必要な場合には他サービスを探った方が目的に合うでしょう。
スカウターの能力検査は無料なので、パイロット導入で自社の応募層へのフィットを測ることには金銭的な負担はありません。 なお、検査料金が無料でも、受検者の登録、案内、受検管理などの運用は増えるため、導入コスト全体がゼロになるわけではありません。
性格尺度は意味のずれやすさがネック
性格検査は、いずれも科学標準のBig5ではない独自の尺度を性格としてレポートします。 スカウターは資質検査を買うと、41の指標を分析し、そのうち7つを性格としています。
| SPI3 | スカウター | |
|---|---|---|
| 性格尺度 | 社会的内向性、内省性、身体活動性、持続性、慎重性、達成意欲、活動意欲、敏感性、自責性、気分性、独自性、自信性、高揚性、従順性、回避性、批判性、自己尊重性、懐疑思考性 | 活動性、社交性、慎重性、新奇性、固執性、主体性、決断性 |
性格については、ビッグファイブではないため仕事の成果予測に使える根拠はありません。 SPIは著名であるため、学者による過去の分析があります。その結果、ラベルの数ほど性格成分は観測できず、職務予測力も低い結果でした。スカウターにはたどれる研究はありません。
非ビッグファイブの問題は、計測したツール以外の方法で検証できないことです。 これは尺度名を見た人が、同じ心理状態を思い浮かべるとは限らず、人によって解釈が違うという意味です。
たとえば「慎重性が高い」と書かれていても、ある面接官は「確認を怠らない人」を想像し、別の面接官は「決断が遅い人」を想像するかもしれません。
ビッグファイブは、幅広い人々が知覚する性格を直接取り出す研究成果なので、解釈が一致します。 広い環境で繰り返し観察されたという決定的な点で、科学研究ではビッグファイブが基準になっています。
独自尺度では、尺度の説明や面接時の着眼点、行動例をツールが提示しても、それが性格由来であることの説明になりません。
職務予測に使いづらい項目リスト
スカウターの資質検査は、41項目のうち34の指標が性格以外の独自心理尺度である点がSPIとは構造的に違います。 表示項目は多いのですが、仕事のパフォーマンスを推定する尺度として適しているものはないと考えられます。
| スカウターの分類 | 尺度 | 研究で対応する概念 |
|---|---|---|
| 意欲 | 向上欲求、挑戦欲求、自律欲求、探究欲求、啓発欲求、承認欲求、エネルギー | 仕事への動機づけ |
| ストレス耐性 | 精神的耐性、身体的耐性 | ストレスへの耐性・回復力 |
| 価値観 | 公益志向、成長志向、金権志向、享楽志向、安定志向 | 仕事上の価値観 |
| ネガティブ傾向 | 非自尊傾向、気分傾向、悲観傾向、非倫理傾向、モラトリアム傾向、不適応傾向 | 対応する研究概念なし |
| 思考力 | 直観力、論理力、実行力、共感力 | 職務行動・職務適性 |
| 職務適性 | 人間関係を築いていく職務、フットワークの軽さを必要とする職務、リーダーシップを必要とする職務、過去に事例のない新しい職務、反復・継続的な職務、企画力や創造力を必要とする職務、丁寧さ注意深さを必要とする職務、情報を集め問題を分析する職務 | 職務行動・職務適性 |
| 戦闘力 | 戦闘力 | 複数尺度から作る総合指標 |
| 虚偽回答 | 虚偽回答 | 回答の歪みをみる指標 |
一般研究を類推できる分野については、その研究を参考に割り引いた値が参考になります。
相対的に挙動を推定できるのは「意欲」です。 仕事への動機づけ(モチベーション)から、その後の職務成果への関係を調べた近年のメタ分析では、仕事のパフォーマンスを統制したうえで β=.143 でした。
いちおうは正の値ではありますが、平均的な関係としては小さい値です。 個人レベルでは、職務成果の分布が大きく重なり、意欲の高低と職務成果の順位に多数の逆転を含むと考えるべき水準であり、採否に用いると誤選択の危険があります。
ストレス耐性に近いレジリエンスにも、職務成果との関係を示す研究がありますが、これも動機づけと同様の小さい値です。 近年の大規模メタ分析では、他者評定の職務パフォーマンスとして .12 や .19 といった値が報告されています。何をレジリエンスと定義するかによってバラつきがあります。
このほか、価値観やネガティブ傾向については類推であっても対応する職務関連研究がなく、職務成果を予測できる指標として捉えられる状況ではありません。 思考力や職務適性、戦闘力は、コンピテンシーに該当する概念と考えられ、各企業のポジションを考慮せずに予測できる指標ではないと言えます。 虚偽回答は回答の歪みを見るための指標です。
なお、精神分析(660円/名)はさらに一段別の位置づけです。
能力検査を外せない場合にスカウターが選択肢
適性検査は、学力テスト形式の能力検査の想起率が高いものの、用途が限定的で現在ではかなり補助的なツールです。 性格検査は、いずれも非ビッグファイブであり基礎的な分析指標に依拠しづらいため、どちらが推奨と言えません。
| SPI3 Webテスティング | スカウター | |
|---|---|---|
| 購入の選択肢 | 基礎能力検査+性格検査セット | 能力検査・資質検査から選択 |
| 料金 | 4,000円/名 | 能力検査:0円/名・資質検査:990円/名 |
| 検査時間 | 性格+基礎能力で約65分。Webでは能力検査だけの設定はない | 能力検査30問・30分。資質検査150問15〜20分 |
| 公式サイト | 詳細 | 詳細 |
能力検査をどうしても利用したい場合に限り、スカウター能力検査だけを0円で利用するのが合理的でしょう。 この場合、難易度のフィット確認は必要です。
スカウターの利用シナリオに当てはまらない場合には、別のサービスの方が目的に適合します。
スカウターに着目する最大の理由はコストなので、SPIの4000円は割高でしょう。 能力検査と性格検査をセット購入する必要がある点が大きなネックです。
性格検査を使うなら、Big Fiveを面接と採用後の共通軸として使います。
たとえば、情緒が安定しない人がメンタル不調で休職しがちな職場では、より高い情緒安定性を確認するのは合理的です。 このとき、情緒安定性をツール以外でも確認でき、一致することは大事です。
ビッグファイブのスコアは、専門の検査会社だけが意味を定義できる特殊な差ではありません。 観察誤差はありますが、独自尺度のように言葉から想起するものが性格を指していない可能性は除外できます。