SPI3と玉手箱Ⅲは、どちらも採用選考で使われている適性検査です。 どちらを選ぶべきかは導入環境によって変わり、また、かなりのケースでこの2つがベストと言えないことがあります。
導入しやすいWebテスト形式について、徹底比較します。
能力検査の内容の違い
| SPI3 | 玉手箱Ⅲ | |
|---|---|---|
| 科目内容 | 言語分野: 二語の関係、語句の意味、文の並び替え、長文読解。非言語分野: 座席配置等の推論問題、表を読む問題例が公式に掲載されている。 | 計数理解テスト(四則逆算): 四則演算を組み合わせた等式の未知数 / 言語理解テスト(大意把握): 約1000文字の文章から筆者の趣旨を判断 / 英語: 200〜400語程度の文章と設問の論理的一致を判断 |
学力テスト形式の能力検査の最大のポイントは、学術研究の進展により仕事の成果の予測力が引き下げられてきたことです。 かつて期待されていた使い方ができないことが分かっています。
近年の研究にもとづくと、総合得点で偏差値35または下位7%水準以下だけを弱いマイナス材料として残すという使い方が適切です。
これは直接不採用を決める点ではなく、かなり低い得点が出たときに、仕事で必要になる理解・処理能力に不足があることに着目する目安です。 たとえば、面接やワークサンプルなどでその仕事への適性をプラスに評価できる材料が確認できなければ、不通過とする判断は妥当です。
SPI3も玉手箱も、能力を数値として返すので、スコアに比例した評価として使いたくなります。 しかし、その数字の大小をそのまま仕事の能力差に置き換えられない、という点が研究成果です。
たとえば偏差値65の応募者を偏差値50の応募者より高く評価するといった、細かな順位づけには使えません。 また、応募者が多いから例年45で切っていた基準を今年は55で切る、といった足切りの調整としても機能しません。 これは、切り捨てた層に仕事で活躍しうる人材が普通に含まれうる、という意味です。
導入するなら、自社応募者の下位を分離できる水準かを確認する必要があります。 必要以上に難しい課題は、学習経験や問題形式への習熟など、一般能力以外の差を増やす可能性があります。
また、玉手箱の英語テストを日本で実施する場合、本来の意図である基礎的な知的能力の計測にとってはノイズ成分が増えます。
知的能力じたいの計測が全体的に成功しているとは言いがたいのでマイナー要素ではありますが、これをマイナーと捉えるのであればそれだけ能力検査じたいを不要と捉えているとも言えます。
性格分析項目が多すぎるとの指摘
性格検査は、いずれも科学標準のBig5ではない独自の尺度を性格としてレポートします。
| SPI3 | 玉手箱Ⅲ(OPQ) | |
|---|---|---|
| 性格尺度 | 社会的内向性、内省性、身体活動性、持続性、慎重性、達成意欲、活動意欲、敏感性、自責性、気分性、独自性、自信性、高揚性、従順性、回避性、批判性、自己尊重性、懐疑思考性 | 説得力、指導力、独自性、外向性、友好性、社会性、謙虚さ、協議性、面倒み、具体的事物、データ、美的価値、人間、オーソドックス、変化志向、概念性、創造的、計画性、緻密、几帳面、余裕、心配性、タフ、抑制、楽観的、批判的、行動力、競争性、上昇志向、決断力 |
性格については、仕事の成果予測に使える根拠は弱いと言えます。
SPIは著名であるため、学者による過去の分析があります。OPQも一般的な独自尺度と違い、外部研究を追跡できます。
それぞれの結果は異なるものの、ラベルの数の分だけ性格成分は観測できなかったという点で共通しています。本来測れる対象より項目が多すぎるのは、独自尺度の追試で頻出するパターンです。
これはいずれも旧バージョンに対する研究ですが、ラベル過多の構造じたいは現バージョンも同様です。そのため、計測項目それぞれの背後にじっさいの性格が捉えられているとはいえない状況です。 言い換えれば、尺度名を見た人が、同じ心理状態を思い浮かべるとは限らず、人によって解釈が違うとも言えます。
たとえば「慎重性が高い」と書かれていても、ある面接官は「確認を怠らない人」を想像し、別の面接官は「決断が遅い人」を想像するかもしれません。
採用で性格を見るなら、細かな項目数の多さより、誰が測っても同じように捉えられる安定した性格特性を基準にする方が安全です。
ビッグファイブは、幅広い人々が知覚する性格を直接取り出す研究成果なので、解釈が一致します。 広い環境で繰り返し観察されたという決定的な点で、科学研究ではビッグファイブが基準になっています。
独自尺度では、尺度の説明や面接時の着眼点、行動例をツールが提示しても、それが性格由来であることの説明になりません。
月平均約35名から、玉手箱ⅢはSPIより安くなる
| SPI3 Webテスティング | 玉手箱Ⅲ | |
|---|---|---|
| 購入の選択肢 | 基礎能力+性格 | 言語・計数・英語+OPQ |
| 検査時間 | 性格+基礎能力で約65分 | 総合49分(能力各約10分+パーソナリティ) |
| 料金 | 4,000円/名 | プランB: 年120万円+1,100円/名 |
| 公式サイト | 詳細 | 詳細 |
SPIと玉手箱はどちらも能力検査と性格検査をセットで導入することになります。 全体的な方式が似かよっているため、最後は利用人数でコストパフォーマンスを比較するのが分かりやすいでしょう。
SPIを4,000円/名、玉手箱ⅢプランBを年120万円+1,100円/名として単純比較すると、年間約414名、月平均約35名から玉手箱Ⅲの方が安くなります。 より大規模な利用では、固定費が高い代わりに受検単価がさらに下がるプランもあります。
オーソドックスな能力検査と性格検査を導入したいと決まった場合に、一定以上の受検規模で価格優位性を活かす候補になります。
ただし、大規模利用が前提であるだけに、検査の妥当性を高めにくい点は明確な課題です。 弱い判断基準を大人数へ展開する構造になりやすいためです。
最新の研究成果に学ぶなら、SPIと玉手箱は職務との関連性を追跡しにくい2つの検査をセットにしているので、適性検査本来の目的からは優先順位は低いと言えます。
まずはビッグファイブ性格検査を中心とする他の有力選択肢を確認することが推奨です。