適性検査とは、採用候補者について、仕事に関係する能力・性格・知識・行動などを一定の方法で評価するためのテストです。
適性検査そのものが単体で「良い」「悪い」と決まるものではなく、各企業の仕事との関連づけによって適しているツールが定まります。
「有名な検査を選ぶ」ことから始める導入方法は、ほぼ自動的に誤りと言えます。
モデル化された採用基準にスコアを提供
広く利用されている選考方法を大きく分けると、次の表のような方式があります。このうち、面接以外の方式が適性検査として扱えます。
| 方式 | 主に得られる情報 | 向いている使い方 |
|---|---|---|
| 面接 | 仕事上の状況に対する判断・経験・行動 | 仕事全体を広く確認 |
| 性格検査(Big5) | 比較的安定した行動傾向 | 職務上の行動仮説を補完 |
| 性格検査(独自) | 独自ラベルによる回答傾向 | 面接で確認する仮説づくり |
| 基礎能力検査(SPI系) | 読み書き・計算・推論などの抽象課題 | 必要最低水準の確認 |
| ワークサンプル | 実際の仕事に近い課題の遂行 | 主要タスクを直接評価 |
これらの方法から、各企業・各職種ごとに適したツールを組み合わせて選考フローを作ります。
採用選考では、実際に働く仕事をなるべく多角的に捉えて総合評価することがもっとも重要です。
適性検査は資質やスキルを特定のカットでスコアリングするツールであり、主要であるとしてもあくまで部品です。
よって、適性検査導入のもっとも重要な前提として、面接で仕事ポジションに関する網羅的な評価を保証することが必要です。
たとえば、クレーム対応が重要なポジションを選考する場合、それをチェックする適性検査は存在しないため、クレーム場面を想定した質問項目が漏れない
ようにする、といったことです。
面接は残し、質問内容を構造化する
面接の注意事項は、まずフリートーク形式をやめることです。
候補者ごとに確認する内容が変わりやすく、第一印象や経歴に判断が引きずられます。
そのため、重要な仕事要件については、
- 全候補者に共通する質問を準備する
- 回答の評価基準をあらかじめ決める
- 適性検査で不足する領域を面接質問で補う
という構造化が有効です。
Sackettらが2022年に選抜手法の妥当性推定を再検討したメタ分析では、従来の多くの推定値が過大だったと修正された一方、構造化面接は比較対象の中で最上位に位置づけられました。1
性格検査は「合格点」ではなく行動仮説に使う
性格検査は、能力テストとは異なり、通常は高得点ほど良いという一本の尺度ではありません。
たとえば、外向性が高いことが顧客対応では有利に働く場面があっても、集中作業では同じ方向が重要とは限りません。誠実性のように多くの職務で関係しやすい特性もありますが、最終的には仕事との関係を定義して利用する必要があります。
Big Fiveは、異なる検査間でも比較的共通した性格語彙を使える利点があります。
| 特性 | 説明 | |
|---|---|---|
| 1 | 信頼性 | あらかじめ決められたルールに忠実な度合い |
| 2 | 情緒安定性 | ネガティブな情動に関する強さ・持続性の度合い |
| 3 | 開放性 | 連想や行動が表現する複雑さ・幅広さ・深さ・他者との違いの量 |
| 4 | 外向性 | 社会や物質的な外界に対して、エネルギッシュに働きかける度合い |
| 5 | 協調性 | 他の人との距離感について、集団性/孤立性の度合い |
一方、独自方式の性格検査では、表示されるラベルがどの心理特性を表しているのか、またその解釈を仕事上の行動にどう結びつけるのかを個別に確認する必要があります。
性格検査の回答には自己呈示や回答スタイルの影響も入り得ます。したがって、結果を人物の「真実」とみなすより、面接や他の情報と照合する仮説として扱う方が安全です。
能力検査は「高いほど優秀」ではなくなった
学力テスト形式の一般認知能力(GMA)テストは、「高得点者ほど仕事の成果も高くなる」という予測変数としての根拠が近年かなり修正されました。
「偏差値が60の人は55の人より仕事も比例して優れている」と捉えられていたのは、今となっては誤りです。
Berry, Lievens, Zhang, Sackett(2024)は、複数の選考手法を組み合わせたメタ分析行列で、GMAテストを選考システムから外しても全体の妥当性は一般にほとんど低下せず、人種による不利益な選抜差は大きく縮小すると報告しています。2
これはSackett et al.(2022)が人材選抜研究で使われてきたレンジ制限補正を再検討し、GMAの仕事成果との推定相関が旧推定の .51 から .31 に引き下がった知見の具体的な後続研究です。
一方で、得点の低い外れ値の応募者について、仕事上必要な最低水準を満たしていないと捉えるフィルタとして扱う妥当性はあります。 各検査に最低基準を置いて不通過とする多段階選抜じたいは問題ありませんが、ボリュームのある中心得点帯で切るべきでないことは分かっています。
ここで「そんな受検者はほとんどいないので実用上の意味がない」と感じるならその通りであり、学術研究はそのように示唆しています。
具体的には、
- 大量の文章を正確に読む仕事で、基本的な文章理解を確認する
- 日常的に数値を扱う仕事で、基本的な計算ミスが多発しないことを確認する
といった点を確認する使い方です。
スコア帯の広い部分が説明力に乏しいため、面接と組み合わせれば予測の妥当性が上がるというモデルとも言いにくい方式です。
ワークサンプルは仕事との対応関係を直接確認しやすい
仕事に近い課題を候補者に実行してもらうワークサンプルは、テスト内容と仕事内容の対応を直接説明しやすい方法です。
たとえば、
- エンジニアに短いコードを書いてもらう
- 英語で顧客対応する職種で会話課題を行う
- 営業職で顧客ヒアリングから提案までを模擬する
- 事務職で実際に近い資料を使って具体的な確認作業を行う
といった方式です。
ただし、「実務っぽい課題なら何でもよい」ということではありません。仕事には複数のタスクがあるため、選考課題が仕事の一部分だけを過大に代表すると、そこから仕事全体の成果を推論する根拠は弱くなります。
ワークサンプル出題のセットが採用ポジションを表現するような網羅性を持っていることも大事です。その検証には、仕事内容の分析が大事です。
先ほどの例で言えば英会話は仕事の一部であるケースの方が多いはずですが、それが仕事のうちどの程度のウエイトを占めているかを判定し、残りの部分を面接で評価して総合する、という方式が現実的に妥当でしょう。
この方式の難点は、ツールとして利用できる市販のサービスの選択肢が狭いことです。 ソフトウェアエンジニア採用のように利用できる場合には便利ですが、選択肢がない場合にはオリジナルのロールプレイを作り上げる必要があります。
ひとつ重要な注意点として、クイズ形式で職務知識を問うテストはワークサンプルと見なせないという点があります。実際の業務をクイズ形式で実行することは考えられないからです。
直接性と網羅性が非常に低いことを意識して、弱いヒントとして面接の参考資料に用いることが比較的妥当でしょう。
適性検査は単独で採否を決めず、選考システムとして設計する
適性検査の導入では、各テストの精度だけでなく、複数の手法をどう組み合わせるかが採用判断を左右します。
代表的には次の2方式があります。
多次選考:最低条件を順番に確認する
各手法に通過条件を置き、条件を満たさない場合には不通過になる方式です。
たとえば、
- 必須資格・職務経験
- 構造化面接
- ワークサンプル
のように使います。
明確な必須条件があるときには分かりやすい一方、不必要に高い足切りを置くと、有望な候補者を失います。
総合評価:複数の強みを総合する
複数の評価得点を組み合わせ、一つの弱みを別の強みで補える方式です。
たとえば、顧客対応職で、
- 会話の正確さ
- 問題解決
- 誠実性
- 面接での状況判断
を総合する設計です。
実際には、必須条件だけ選考不通過にし、その後は総合評価するハイブリッドも使えます。
重要なのは、テスト会社が出力した総合点をそのまま採否基準にすることではなく、自社の仕事要件に合わせて「何を足切りにし、何を補完可能とするか」を決めることです。
妥当性は「検査の実績」ではなく、自社で使う推論を支える証拠
選考方式が妥当であるためには、仕事上の成果をツールのスコアから予測する理由づけが明快であることが大事です。大きくは次のような証拠を組み合わせます。
- 他の変数との関係:テスト得点が仕事成果などと期待どおりに関係するか
- 内容との関係:テスト課題が仕事内容を適切に代表しているか
適性検査サービスでは「導入社数」「受検者数」「○万人のデータ」といった数字がPRされるものの、実はそれ自体は採用判断の妥当性とは関係がありません。
また、「複数項目が想定した心理構造を測っているか」という内部構造や「想定した認知・判断過程で回答しているか」を指す回答プロセスはかなり補助的で、単体では証拠としては弱い点にも注意します(仕事との関連を説明するものではないからです)。
仕事を分析して採用後の要件を具体化しておくこと
選考設計で最初に必要なのは、募集ポジションの仕事を分解して網羅することです。 この職務要件と適性検査などの選考手法が論理的につながっていることは大事です。
たとえばクレーム対応が重要な仕事なら、「対人能力」のような抽象語では不十分で、事実確認・感情的な顧客への応答・解決策の提示・社内へのエスカレーションなど、実際に求める行動へ分解します。
ここで初めて、面接で聞くべきこと、ワークサンプルにできること、性格検査から補助情報を得られることが分かります。
適性検査は、採用基準立案のヒントには有用ですが、導入したら自動的に基準になる道具ではありません。
先に仕事と判断基準があり、その一部を再現性高く測るためのツールです。
公正な採用は「機械判定だから公平」ではない
雇用の際の人種や門地などによる差別をなくすことは全世界で求められます。企業は自社の職務への適性で採否を判断する公正な採用選考の達成度合いを、 つねにチェックする必要があります。
適性検査は全員に同じ形式で実施できるため、面接官の気分や縁故だけで決める選考を抑える材料にはなります。
しかし、機械的に点数を出すこと自体は公平性を保証しません。 面接を含めた選考ツールとプロセスのセットが、自社の仕事における活躍と関連するように組み立てることがテーマなのです。
公正さには少なくとも、
- 同等の受検条件が与えられているか
- 練習機会や説明へのアクセスに差がないか
- 特定集団について予測が系統的に過大・過小になっていないか
といった複数の観点があります。
既述のとおり、とくに能力検査は平均得点の集団差が比較的大きいことが知られています。多くのケースで能力検査を廃止することで、ロスなく手軽に公正さを向上できます。
自社で採用結果を蓄積できる場合には、採用後評価との関係だけでなく、候補者集団ごとの通過率や予測誤差に著しい偏りがないことを確認する方がよいでしょう。
適性検査のおすすめ導入手順
適性検査を新しく導入する場合は、次の順序が実務上分かりやすくなります。
-
仕事を分解する 主要タスク、失敗すると困る行動、必要な知識・スキル・行動特性を整理します
-
面接で評価範囲を確保する 市販テストで測れない重要項目を、構造化した質問として残します
-
直接測れるものから選ぶ 職務知識やワークサンプルなど、仕事との対応を説明しやすい方法を優先します
-
ビッグファイブの性格検査で安定した行動傾向を補う 解釈軸にコンセンサスのある検査を使い、仕事上の行動仮説に結びつけます
-
複数手法の組み合わせ方を決める 通過/不通過を直接分ける項目と、総合評価に用いる項目を分けます
-
結果を確認して更新する 採用後の成果・候補者の通過状況などを見て、基準や検査を見直します
また、会社全体の方針や仕事内容が変化した場合には、妥当性も変わります。
変化の影響を大きく受けないような採用基準を定義できればベターですが、一度検証した妥当性の証拠を永続利用せず、必要に応じて選考手法を更新することも必要です。
適性検査サービスを比較するときの確認項目
サービス選定では、検査の知名度や問題数より、次の点を確認します。
- 何を測っているのか
- その測定対象を裏づける研究や技術資料があるか
- 自社の仕事内容とどう結びつくか
- スコアを順位・足切り・面接補助のどれに使う想定か
- 他の選考手法と組み合わせられるか
- 候補者への説明・受検環境の扱いが明確か
- 仕事内容や採用基準が変わったときに見直せるか
独自検査に対する学者の見解
従来、日本では独自方式の適性検査が普及してきましたが、有用性はかなり否定されています。独自構成であることじたいに限界があることが、個別のケースから分かります。
SPI
SPIは日本に能力検査(GAT)を定着させた代表的な適性検査ですが、その予測妥当性は低いことが分かっています。
まずSPIじたいの妥当性の研究はありません。管理職向けの能力検査NMATには職務妥当性研究があり「概念的理解は0.20、論理的思考は0.27、総合でも0.26とかなり低い。職務遂行能力評価という基準の信頼性を0.60とみなして補正した数値で、補正前の数値は0.14、0.19、0.18とかなり小さい」34とまとめられます。
著者の村上宣寛は、結論として日本の能力検査の質の低さにより職務妥当性を予測できないと指摘しています。
しかし、この評価は米国の妥当性研究が0.51であった時代の評価で、既述のとおり今では0.31に訂正されているため、SPI特有ではなく能力検査そのものの限界と言えます。ただ、最新の基準と照らしてもなおSPIの妥当性は積極的に低いと指摘される余地も残っています。
ギルフォード性格検査
YG(谷田部ギルフォード性格検査)とMG(本明ギルフォード性格検査)は、1940年代のギルファドの仮説をベースに作られたもので、研究者達の体系的な反論により、有用性が否定されています。
問題点は多岐にわたりますが、12の性格要素を表す因子が統計的に再現しないため説明が成立していない、という点が根本的な問題と言えます。再現研究では、対人関係・劣等感・活動性の第3因子までで75.2%を説明する結果となり、YGの構成とまったく一致しません。5
特性論としては先駆でしたが、分析手法が完備していなかったため正確に抽出できなかった例と言えます。
内田クレペリン検査
内田クレペリンは、無数の単純計算を繰り返すという独特な方法で知られています。この方式には心理学者による検証結果があり、計算の正答数がはっきりと少ない人は知能に難がある、という部分に限り信頼できる、という結論になっています。
クレペリン検査の主張は、疲労と休憩の関係から性格を判定できるという点にあり、定型パタン/非定型パタンから多彩な判定結果が出るものの、それらには裏付けがないことが確認されています。
たくさんの計算をするために全力を尽くすほど異常な結果が得られやすい点に分かりやすい問題があります。
日本国有鉄道(現在のJR)の運転士の適性検査として使われた経緯から、安全分野の実績イメージがありますが、それは誤解です。安全に関する心理尺度を測れているわけではないため、安全要求が高い分野ほどクレペリンに頼るべきではないと言えます。
参考文献
- 二村英幸『人事アセスメントの科学』
- 村上宣寛『心理テストはウソでした』
-
Sackett, P. R., Zhang, C., Berry, C. M., & Lievens, F. (2022). Revisiting meta-analytic estimates of validity in personnel selection: Addressing systematic overcorrection for restriction of range. Journal of Applied Psychology, 107(11), 2040–2068. ↩︎
-
Berry, C. M., Lievens, F., Zhang, C., & Sackett, P. R. (2024). Insights from an updated personnel selection meta-analytic matrix: Revisiting general mental ability tests’ role in the validity-diversity trade-off. Journal of Applied Psychology, 109(10), 1611–1634. ↩︎
-
二村英幸・今城志保・内藤淳「管理者層を対象とした性格検査・知的能力検査の妥当性のメタ分析と一般化」、組織行動科学、2000年、13、159-167 ↩︎
-
村上宣寛『IQってホントは何なんだ?』 ↩︎
-
續有恒・織田揮準・鈴木真雄「質問型式による性格診断の方法論的吟味―YG性格検査の場合」『教育心理学研究』、70年、18,33−47 ↩︎