目標を決めるには探索と評価の手間をかける必要があります。
目標を見いだしにくい人にとっては、どのような視点で検討を進めるべきかという点から先に進めず迷いがちです。ビジネスの目標であればいくつかの定型的なチェックポイントがあります。
利益水準
ビジネス活動には、利益を連鎖的に創出するという基本ルールがあります。
そのため、利益水準の目標は全体の活動設計のキーになります。
ただ、仕事の流れ上、営業利益は直接コントロールできないこともあり、妥当な水準を見出すことが難しい項目でもあります。
利益計画のポリシーを決めるには、未来の大きな活動やそのために立つべきステージといった長期的な価値観から導くことが有効です。
長期的なビジネスステージを描くには、有力な企業実例の理解を深めると良いでしょう。
売上・粗利益
ミドルマネジメント計画のターゲットは売上におくことが多いと思います。
組織運営のKGI(Key Goal Indicator)として、新規顧客獲得件数や解約率といった売上と直接する業績指標を選ぶケースは一般的でしょう。
売上と粗利益はセットで計画します。
製品・サービスの原価は1販売あたりの単価が決まるものなので単純計算で連動すること、販促費は売上ボリュームの前提となるため売上政策と同時に検討すべきものだからです。
売上・粗利益のチェックポイントの1つは、目標利益との整合性です。「既存売上の延長では目標とする利益額に足りない」という課題を認識し、そのギャップを新たな拡大施策で埋める、という流れで検討を進めることが多いでしょう。
もう1つのチェックポイントは、”周辺”機会の探索・検証です。
たとえば店舗ビジネスであれば、文字通り既存店の地続きエリアの機会を探ります。また、サービス業などでは提供サービスの前後の工程も既存ビジネスの周辺と考えられます。そのほか、小さな特殊要望に応えるオプションの提供による客層のスライドという手もあります。
KPI管理
目標の性質上、経営指標から解説をスタートしましたが、初歩的なビジネス目標設定は日々の活動設計に対して行うことが多いと思います。
そして、ビジネス活動の直接の制御対象としてKPI(Key Performance Indicator)を設定します。
なぜKPIが重要なのか?という点は単純です。たとえばKGIとして新規売上獲得件数を設定したとき、最終的に顧客が買ってくれるかどうかは分からないからKGIは直接操作できないからです。
多くのビジネスではいくつかの活動ステップを経て売上に到達する構造になっています。
KPI目標を設定する際の最大のチェックポイントは、KPIは工程間で減衰するため、前工程になるほどボリューム確保が重要ということです。
物量作戦に失敗すると自動的にKGIを下回ります。
このことは極めて単純な事実ですが、KPIの物量不足でミッション未達、というオチは最もよくある展開であるように見えます。
なぜなのでしょう?
この点は個々人の目的達成にとって重要なポイントなので、各自思い当たるふしを自問自答すべきです。
達成期間
期限、すなわち「いつ完了するのか?」はすべての目標の必須事項である一方、目的を見出しにくい人がもっとも決めづらい項目でもあります。
期限もまた上位・後続の目的や資源など他の制約条件との兼ね合いで決まるものですが、初心者はむしろ達成期間を短く固定してしまった方が無難です。
多くの初心者は1週間を超える目標を管理できないことから、達成期間を最大1週間とすべきでしょう。
それより長い目標は実行途中で消えてしまう傾向が強いため、細かい目標に分割することが重要です。
上達につれて長期間の検討も可能になりますが、その場合にも原則として達成期間は短く設定した方が良いでしょう。
目標は達成することで効果を得られるものであり、期間の長い目標ほど達成しづらいからです。
仮置きした期間が長くなってしまった場合、どのような実行リスクがあるのかを特定し、計画精度アップのヒントを得ることが重要です。
多変量が迷いのもと
ビジネス目標の着眼点をひと通り提案してきました。
目標設定は、隣りあった目標・指標と相互に関連していて、ある目的の制約条件が関連目標に波及しあって全体が決まる、という構造になっています。
向き不向きで言えば、多次元の事がらを同時に把握できる空間認識力に優れた人が目的を見出しやすい傾向にあります。
一方、苦手な人向けの攻略法としては、変数を減らす方向で検討すると決めやすいでしょう。
たとえば、何でも短期決戦をしかける人やKPIの物量に言い訳のない人は、その項目が固定され、変数が減るので目標の見通しが良くなります。
また長い目でみると、全体的な目標設定力のレベルアップのためには、ビジネスリテラシーの知識獲得が有効です。
1つひとつの分野の知識に即効性はありませんが、MBA科目のような分野全般の理解に穴がない状態を作れれば、ミドルマネジメントについては目標を見出しやすくなります。